2023/05/27

2023/5/24 RBC 活動報告

  5月24日の読書会では、鴨長明の『方丈記』を紹介しました。

『方丈記』(1212年) 鴨長明 (1155~1216年)浅見和彦 校訂・訳   笠間書院

方丈とは…一丈(約3m)四方の部屋のこと。そこで記したものが方丈記。

〈 方丈記の構成 〉

ゆく河のながれ

安元の大火 (1177年4月 長明 23才)

治承の辻風 (1180年4月 長明26才)

福原への遷都 (1180年6月)

養和の飢饉 (1181年6月 長明 27才)

元暦の大地震 (1185年7月 長明 32才 )

世に従えば、身、苦し

父かたの祖母の家

仮の庵のありやう

山中の景気

仮の庵もややふるさととなりて

手のやつこ、足ののりもの

三界はただ心ひとつ

一期の月かげ かたぶきて


〈 鴨長明が影響を受けた作品 〉

『池亭記(ちていのき)』(982年) 慶滋保胤(よししげのやすたね)作者は長明の親族にあたる人物。平安時代 中期に著した随筆。当時の京の都の世相と京都西部で隠遁生活に入るさまを描く。その生き方と作品に長明は私淑していた。

 〈 夏目漱石と方丈記 〉

 夏目漱石は、帝国大学英文学科時代に教授ディクソンから依頼され、方丈記の英訳を行った。『草枕』の冒頭の処世の世知辛さを感じた時に何処か心安らぐ場所へ移り住みたくなる、という描写は方丈記の影響を感じさせる。  ~山道を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば、窮屈だ。とかく人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて画ができる~

 明治という時代もまた、維新によって大きな変化がもたらされ、人々の考え方、生き方も変革を迫られた。方丈記に描かれてい天災や政治に人々が翻弄される姿に、漱石は共感を抱いたかもしれない。

  〈 方丈記を読み終えて 〉

 鴨長明の生きた時代背景、その人生と作品とを突合せながら、読み進めました。 自然災害や疫病、治世の変遷、勢力争い等次々と災難に見舞われる中、心の安寧を探求する姿が、後世の人々を惹きつけてきたように思います。 災害記録文学やミニマムな生活の指南書としても読み解くことができ、多面的な楽しみ方ができます。音読してみると端正な文章が心地よい響きとなり、和歌の名手でもあった長明が選び抜いた言葉の美しさが一層際立ちます。   記:上村